TEdb project on Starrydata

日本熱電学会の熱電特性データベースWGが主催する、学術論文からの熱電特性データベース構築プロジェクトのブログです。

アメリカのすごいMaterials Informaticsサイト

アメリカは2011年にMaterials Genome Initiative(MGI)が始まり、莫大な予算をつけてきたことや、IT技術が進んでいることなどにより、すごいMIができるサイトがいっぱいあります。すべて無料で使用でき、元データを一括で入手することもできます。

私の専門分野である熱電材料に偏ってしまいますが、そんなサイトをいくつか紹介したいと思います。

1. Materials Project(計算系・一般)

第一原理計算データを掲載した大規模なWebシステムで、UIがきれいでわかりやすくて良いです。これが全部タダで見られるだけですごいですが、さらにAPIでフリーでいろいろ取ってこられるというのもすごいです。ここのAPIの使い方については別の機会に紹介してみたいと思います。
materialsproject.org

2. AFLOW(計算系・一般)

UIはちょっと玄人向けになりますが、計算データの量・品質ともに充実したWebシステムです。DOS(状態密度曲線)のデータなどは、Materials Projectよりこっちの方がきれいだなーと思ったりもします。こちらもデータをAPIで取ってこられるようです。
www.aflowlib.org

3. TE Design Lab (計算系・熱電)

Materials Projectに収録されている物質から、熱電特性に関係するパラメータを計算したデータベースです。2015年に学会でこのデータベース発表を聞いて、熱電特性の第一原理計算をやっていた私は、もう私計算することないじゃんと思いました。約2300物質の計算結果が掲載されていて、CSVとしてダウンロードしたり,グラフ化して表示することもできます。熱電材料としての有望性は、βという値の高さで判断すればよいそうです。
http://tedesignlab.org/tedesignlab.org

4. MRL Datamining Chart (Energy Materials Datamining)(実験系・熱電)

100本以上の文献から、熱電特性の実験データを集めてきて、グラフ上で比較できるサイトです。2013年くらいに公開されたときは感動しました。私が実験値MIをやろうと思ったとき、まずイメージしたのがこのサイトの発展版でした。代表的な試料を探したり傾向を探索するのに便利です。
http://www.mrl.ucsb.edu:8080/datamine/thermoelectric.jspwww.mrl.ucsb.edu

5. Citrination

実験値MI(計算&実験データの機械学習)の分野で一番進んでいるのはここだと思います。計算データも実験データも、あらゆるデータを絡み合わせてMIをやろうというベンチャー企業です。物理量から物性を検索したり、MIに使えるデータセットをまとめてダウンロードできたりもできます。論文のテキストマイニングで取ってきたバンドギャップの実験データとかも便利です。
https://citrination.com/search/simple/citrination.com

(Citrinationの熱電特性予測システム)

Citrinationが初期のころから提供している機械学習Webシステムです。外部データベースに載っている計算データと実験データを参考にして、ゼーベック係数や電気伝導率、熱伝導率、バンドギャップの観点からの有望性を100点満点で評価するというシステムです。現在の有望性ランキング1位はTl9BiTe6という物質のようですが、今後、参考にする実験データが増えれば、もっと良い予測ができるようになるかもしれません。個人的に好きなのが、架空の物質名を書いても、ちゃんとその物質の熱電特性の有望性を答えてくれるところです。完全に「研究者の勘」みたいな機能ですが、どのくらい当たるか気になります。。。
thermoelectrics.citrination.com